新卒2年目、アメリカで家を買った

2021年も終わりに近づいています。今年私に起こった大きな出来事である、家を買うというイベントが最近落ち着いてきたので、記録にして残しておこうと思います。一部ルールやプロセスは州によって違うところがあります。

きっかけ

私はコロナの真っ只中であった2020年の春に、アメリカの大学学部を卒業してから、現地で就職してソフトウェアエンジニアとして働いています。大学卒業後ニューヨーク市に引っ越して、アパートの一室を一年借りて、ルームシェアしていました。アパートの契約終了が数ヶ月後に迫ってくるなか、自分の経済状況を振り返って、このままアパートを借りて、その家賃を払っているのがもったいないと感じるようになりました。そこまで家賃は高くなかったものの、家賃である以上払いっぱなしで資産になりません。なので、せっかくなら、自分の資産になるものにお金を払いたいなーと思ったのです。

あと、日々の生活で収入における支出の割合をできるだけ減らしたいとも思っていました。支出の大半が、税金、家賃、食費だったので、家賃を減らす、あるいは住居費を減らすことで支出の額全体を減らすことを望んでいました。のちに詳しく書きますが、自分が一つの部屋に住み、余った部屋を賃貸として貸し出すことで、住宅ローンの返済の負担を減らし、住居費を減らすことができそうだなと思いました。

住宅ローンの金利が歴史的に低かったこと、それを機会に不動産を購入する人が周りにたくさんいたことなどもモチベーションになりました。

とりあえずググってみる

いざ家探しをするとなり、とりあえず不動産検索サイトであるZillowやCompassでどんな選択肢があるのかを探しました。初めての住宅購入なので、とりあえず小さく始めた方がいいやろということで日本円で2000万円以下のものを探していました。が、調べていくにつれて、2000万円以下で買えるもののほとんどは、大抵studio(ベッドルーム、リビングルーム、キッチンが分かれていない部屋のこと)でロケーションが良くなかったり、所得制限があったりで、なんだかいまいちな気がしました。なんせニューヨーク市とその周辺地域なので不動産は高いのです。:(

この時点で、私は自分がどのくらいローンを借りれるかを知らなかったので、オンラインで住宅ローンの借り入れをできるウェブサイト(better.comとか)で見積もってもらいpreapproval letterをもらいました。結果、自分は2000万円以上借りれることがわかりました。:)

あと、この時期に日本語で書かれたアメリカでの家購入のブログ記事をたまに読んだりしていました。

家のスペックを考えてみる

私の自宅購入の目的は以下の二つでした。

  • 自分の資産になるものにお金を払う
  • 日々の生活で収入における支出の割合をできるだけ減らす

そんなことを考えていたとき、このツイートが目に入りました。

元エンジニアで現在早期リタイアをされて、シアトルエリアで不動産のビジネスをしている方がされていた一連のツイートです。 この7はかなり理にかなっているなと感じました。アメリカの住宅ローンの金利は投資用のものは自宅用のものより高く設定されていることがほとんどなので、新しい家を買う際は、そこを自宅にすることで低めの金利でローンを借りれます。

そこで、この7を再現してみることにしました。ただし、私は一軒家を買う資金力もなく、かつ自分が住みたいとおもえる2世帯住宅が(アクセスが悪かったりで)身近にありませんでした。 なので、二つ以上のベッドルームがあるアパートを買って、自分が一部屋に住み、残りのベッドルームを貸し出すことで、再現することにしました。(<- このアイデア自体はツイートを見る前から考えていたので、一つのツイートが決め手でアパート買った!とかではないですよ、念のため)

そんな感じで、アパート探しの基準を以下のように決めました。

  • 2つ以上のベッドルームがあり500sqft以上の面積があるか、ワンベッドルームまたはスタジオで500sqft以上の面積がありレイアウト的に2つ以上のベッドルームに(HOAの許可が出たら)改装できるか
  • マンハッタンから公共交通機関を使って30分以内の距離にあるか
  • 建物の二階にあるか、それより上に位置しておりエレベーターがついているか
  • 賃貸の需要のあるエリアか
  • 将来的に不動産の価値が上がりそうなエリアか

500 sqftはだいたい46平方メートル・46平米です。今ささっとググったら東京のスタンダードな一人暮らし向けアパートの広さは25平米なので、東京基準で考えたら小さくないですね。

このサイズ感は北米の郊外とかに比べたらめっちゃ小さいです。しかし、ニューヨークエリアは土地も狭く、アパートも狭いので全然あり得ます。shoebox(靴箱)に住むようだとも揶揄されます。そんな感じで調べていくうちに、最低500sqftあったら2ベッドルームは収まることがわかりました。そしてそういうレイアウトのアパートも見かけまして、livableだなーと思いました。

私は車を持っていないので、公共交通機関でのアクセスが良いことは必須で、一階の部屋はセキュリティや騒音面で不安があるので二階以上の部屋。また、今後投資として家を活用していきたいと考えたとき、需要があることや価値の上昇が見込まれることも必須でした。

不動産投資って一般にアパートより一軒家の方が良いとされてる気がしますが、私は不動産投資をメインのビジネスをしたいって感じではない、プラス一軒家を買う資金力がないのでアパートを買うことにしました。元買った値段より高く売れさえすれば良いと思っています。

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Photo by Nout Gons from Pexels

アルター(不動産屋)に連絡してみる

アルターとは不動産を売るセールスパーソンであり、取引を円滑に進める仲介役です。取引が締結された際にリアルターに支払われる仲介手数料は売り手側が負担する(つまり買い手側は払わなくて良い)ので、どんどんリーチアウトしましょう。

ある程度相場がわかってきたところで、いくつかのリアルターに連絡しました。というか、zillowとかcompassとかでリスティングを見にいきたい!的なボタンを押すと、自動的にリアルターアサインされる感じでした。また、ローンの見積もりを出してもらうときに、そのローンの会社と提携している不動産屋を紹介してもらい、そのリアルターを使うことでローンのクロージングコストが割引される、とかいうのもあり、そこでもリアルターを紹介してもらいました。

複数のリアルターと喋ったのですが、結構合う人を見つけるのは回数がかかるかもです。リアルターは不動産を売ることでお金を稼ぐので、良い物件も悪い物件も売れれば良いと思ってとりあえず勧めてくる人がいるので注意が必要です。私の場合最終的に、自身も不動産投資・大家業をしていて大家目線、不動産投資目線でアドバイスをくれて、悪い物件は悪いとはっきり言うリアルターが見つかったので、その人と物件を探すことにしました。とてもknowledgefulでresourcefulなリアルターで、結局最後までその方にはお世話になりました。

物件見学ツアーへ

頼りになるリアルターが見つかったところで、本格的に物件探しが始まりました。前述した、希望のアパートのスペックは伝えてあったので、リアルターが候補を絞ってくれていました。また、私自身もzillowとかで新しくリストされたものなどを頻繁にチェックして、興味の度数とともにリストにして週1~2の頻度でメールしていました。それを元に、リアルターが週一でツアーを組んでくれて、物件をめぐっていました。

たまに、めっちゃ良い感じの物件がオンラインでavailableになってても、実はすでに契約が交わされてたりしてることもあります。リアルターにはその辺りの最新情報をアップデートしていただけるのでありがたかったです。

アルターは週末が物件の見学で忙しいので、平日に見学の予定を入れれると喜ばれます。私は平日の仕事が終わってからツアーをしてました。

最終的に30戸くらい見学しました。リアルター曰く平均20戸くらいで契約が決まるらしいので、私は多い方だと思います。これはエリアやマーケットの状況によって変わります。

アパートを見学するとき、エリアの治安、共有スペースの綺麗さ、郵便受けにものがたまって良いかなどを見ました。ピッカピカとまではいかなくて良いですが、普通にきちんと管理されてないと管理会社の仕事のうまさに不安がありますよね。

私の場合、買った後に、改装して部屋の数をふやすかもしれなかったので、レイアウトとサイズ感を注意して見てました。メジャーで部屋のサイズや窓のサイズ、通気口の位置をメモして、いざ改装するとなるとどんなレイアウトが可能かなどを後から考えれるようにしてました。(市や州によって、部屋のサイズに大して窓は最低このぐらいのサイズでなければならない、などの決まりがあるので必ずそれに添えるかを確認していました。)あと、その建物の管理会社とHOAに私が希望するタイプの改装は許可されているかもこの時点で確認していました。(HOAはルールに厳しいところと緩いところの差が大きいので)

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Photo by Terry Magallanes from Pexels

オファーを出すx3

オファー 1

15件くらい見て回ったあと、割と良いなーと思った物件があったのでオファーを出すことにしました。古めの1ベッド1バスルームの部屋でロケーションはまあまあかなと言う感じでした。が、いざオファーを出して売り手側がオファーを受諾して、アトーニーレビューの段階に入りそうになったとき、ふと、自分はそこに住みたいのか考えてみました。結局、ロケーションに納得がいかなくて、アトーニーレビューに入る前にオファーを取り下げました。治安の悪いエリアではなかったのですが、マンハッタンからのアクセスがバスからしかないこと、そのバスも特に週末は30分おきにしか来ないことなどが不満点でした。

オファー 2

オファー1の後に数件回って今度は本当にいい感じの物件が見つかったので、2回目のオファーをしました。オファー価格はリスティング価格マイナス3kくらいです。めっちゃきれいにメンテナンスされている建物のリノベーションされた一室で2ベッド2バスルームでした。エリアは近くに大学があってそのおかげで治安はいい感じでした。オファーがアクセプトされたのですが、アトーニーレビューをしている最中に、売り手が、もっといいオファーが入ったと言って、取引はなくなりました。売り手のリアルターの返信が遅かったりと、そんな気はしていました。zillowでライクがめっちゃついてたし。

オファー3

気を取り直して数件巡ったのち、結構いい感じの物件がまた見つかりました。リビングルームがかなり広めの1ベッド1バスルームで、セントラルヒーティングで、アパート自体は古いですが、メンテナンスはちゃんとされている感じでした。治安はいい感じで、周辺にハイエンドの新しいアパートがたくさん建てられているエリアで、マンハッタンに電車でもバスでもアクセスできるロケーションでした。オファー価格は強気に出て、リスティング価格マイナス11kでした。結構リスティング期間が延びていたので強気に出れました。アクセプトされましたが、as isのコンディションでOKなら、と言う条件付きでした。as isというのは、その状態で、的な意味です。要は古くて修理が必要かもしれないけど、売り手は直せないよ、それでもいいならのそのオファー価格で売るよ、ということです。その条件を私はのみ、アトーニーレビュー に進みます。

弁護士を雇ってアトーニーレビューをする

売り手と買い手の弁護士が、契約書をレビューして、ここをこうして欲しい、こうした方が良い、とそれぞれのクライアントに有利になるように条件を交渉、改善し合います。私は弁護士はリアルターの紹介で選んだのですが、この弁護士の仕事は結構不満の残るものでした(TODO:振り返りを別エントリーに書く)。ここで、売り手と買い手双方が同意を得ると、インスペクションへ進みます。

物件の点検をする

買い手がインスペクション業者を雇って、物件に欠陥・コード違反がないか調べます。インスペクターはリアルターの紹介で探しました。きちんとインスペクトしてくれて良かったです。インスペクション業者が出すレポートを元に、売り手に修理を頼む部分を交渉します。ここを直してくれないと買えないよ、いやいや、でも私にそんなお金はないから直せないんだよ、的な感じです。そこで合意を得ると、アプレーザルに進みます。 インスペクションで見つかった一部の問題点に対する売り手の対応の交渉結果は以下でした。

  • 窓が一部割れていて、ほぼ網戸がない -> 直せない
  • キッチン周りのコンセントが水回り対応のものではない -> 直します
  • エアコンが壊れている -> 確認したが、動いている。けど、温度計を新しいのにしときました。(後日私のリアルターがちゃんと動くのか確認しにいきました。)

as isでいいよと言った割に、安価で修理できるところはささっと直してくれました。窓は、修理代が高くなるやろなーと思って、売り手側が直すことをあまり期待していなかったので私的には問題なしでした。

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Photo by Max Vakhtbovych from Pexels

アプレーザル

インスペクションで指摘された箇所が直されているのと同じタイミングで、ローン会社がアプレーザルをします。アプレーザルとは、購入金額がローンを融資するのに妥当か、不当に高くないか、のローン会社によるチェックです。このアプレーザルリポートは結構読むのが面白いです。似たような物件がどのくらいで売られた、そしてこの物件はそれに対してこうだから、この値段は妥当だ、みたいな感じに書いています。家の値段の妥当性はこうゆう風に決められるのか、と新しい発見が大きかったです。ここでアプレーザルをパスしたのでローン会社が本格的にローンを発行する準備に移ります。

トラブルが発生する

アプレーザルも終わってローン会社に審査のための大量の書類を送り、クロージングがもうすぐ出来そう、というところで、ローン会社からの待った、がはいりました。ローンを発行したいんやけど、その条件の一つである、HOAの今年分の予算書類がないとのことでした。HOAが今年分の予算がまだ承認していなかったのです(!)。年も半分以上過ぎてるのに。しかも、私を対応してくれていたローンオフィサーがその月に限ってハネムーン旅行中で、そのアシスタントの人がゴタゴタに対応していると言う状態でした。結論から言うと、ここで予算承認を待っている間にクロージングの日が3週間ほど延びました。アパートの契約期限が近づいていており、クロージングが延びすぎると、一時的に住むところを見つけなければならなかったので、結構焦りました。

その予算書類無しでローンを発行してもらうには、ダウンペイメントを多く支払わなければならず、私としてはそれを避けたかったのです。結局、私のリアルターが、売り手のリアルターの人に、HOAに早く予算を承認するよう言ってもらい、なんとかなりました。まあゆーて、本当にどうにもならないようならダウンペイメントを払っても良かったんですが、ローンの会社の人と電話で話した限り、いずれ予算は承認されそうだ、と言う雰囲気があったのでそれを待つことにしました。

ローン会社の人がHOAとトラブってることが分かったのが、アプレーザルが終わった後で、その二週間前からHOAの対応を待っているとのことでした。二週間前から、ローン会社が私のリアルターとコミュニケーションをとってたら、売り手のリアルターにアクションをとってもらえるのも早くなっていて、クロージングを延期しなくて良くなっていたかもしれないです。なので、次回に生かす点としては、ローン会社に、頻繁に、全てが順調に進んでいるか確認する、ということです。

本当にクロージングする

ローン会社からGoサインが出たら、タイトルカンパニーとリアルターと弁護士とでクロージングです。 クロージングの日の朝に物件に行って、物件に問題がないことを確認して、近所のカフェでリアルターと朝ごはんを買って、タイトルカンパニーに行って、大量の書類にサインしました。そしてアパートが引き渡されました。

自宅購入の目的は達成できたか?

  • 自分の資産になるものにお金を払う

✅ ローンを返す生活をしているので、自分の資産になるものにお金を払えています。

  • 日々の生活で収入における支出の割合をできるだけ減らせているか?

✅ 食費より少ない住居費で毎月生活できています。家賃を後に上げて、住居費をほぼゼロにする方向で考えています。

(ローン返済費+HOA fee+税金) - (家賃収入) < 食費

疑問に思われてそうなことをあらかじめ答えてみる(To be updated)

オファーをあまり出していない?

2021年現在売り手マーケットのアメリカの不動産市場ですが、ヒートアップしてるのは郊外の一軒家らしいです。コロみによるリモートワーク需要とHOAの費用がないことから。反対に、私が探していたような、大都市とその周辺エリアのアパート・コンドミニアムはそこまでヒートアップしてませんでした。私がオファー入れた物件全部、リスティング価格より低い価格で入れて、アクセプトされました。

金利の恩恵を受けた?

はい、2.875%でした。

おわりに

知らないことだらけで、学ぶことがいっぱいで楽しかったです!晴れて大家になったわけですが、そこらへんの話も別エントリーに書きます(TODO:大家編をかく)。 あと、役に立ったウェブサイトとか情報とかもまとめたいと思っています(TODO:別エントリーに書く)。 長くなりましたが、読んでいただきありがとうございました。